温暖化が進むと、スキー場はどれくらい減るのだろうか。
北海道大学の研究チームが2026年8月に発表した分析が、9月に入って各地の新聞で相次いで報じられている。
先に答えを言うと気温が4℃上昇した場合、自然の雪だけで全面営業できるスキー場は全国でわずか7カ所にまで減るという。
一方、上昇幅が2℃にとどまれば53カ所が残るとされ対策の有無で結果が大きく変わる内容だ。
この記事では北海道大学の発表内容と報道で分かっていること・まだ分かっていないことを整理する。
近年、暖冬や雪不足によって営業日数を減らすスキー場のニュースは国内でたびたび報じられており、人工降雪機の増設を進めるゲレンデも増えている。
今回の発表はこうした肌感覚の変化を研究データという形で裏付けたものといえる。
- 4℃上昇シナリオでは全面営業できるスキー場が全国7カ所まで減ること
- 2℃上昇シナリオでは53カ所が残るとされ、対策次第で結果が変わること
- 研究を発表したのは北海道大学と森林総合研究所の共同チームであること
- 北海道や長野県など一部地域だけが生き残りやすいとされる理由
- 現時点でまだ公表されていないこと
結論、気温4℃上昇で全面営業できるスキー場はわずか7カ所
北海道大学が2026年8月3日に発表した研究によると、産業革命前からの気温上昇が4℃に達した場合、自然の積雪だけで全面営業を続けられるスキー場は、全国でたった7カ所にまで減るという。
このほかに、一部の区間やコースだけ営業できる「一部営業可能」のスキー場が26カ所あるとされている。合わせても全面・一部あわせて33カ所ほどで、現在全国にある349カ所のスキー場のうち、1割にも満たない数字だ。
この研究は、地球温暖化がここ数年で急に進んだ場合に起こりうる、いわば厳しめのシナリオでの予測である。数字だけを見ると衝撃的だが、後述するとおり対策が進んだ場合のシナリオも同時に示されている。
北海道大学の研究発表の中身
発表したのは、北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院および観光学高等研究センターの吉沢直講師と、森林研究・整備機構森林総合研究所の勝山祐太研究員による共同研究チームだ。
論文は2026年8月1日付で日本雪氷学会の学会誌「雪氷」に掲載され、8月3日に北海道大学から正式に発表されている。研究では、全国349カ所のリフトやゴンドラを持つスキー場を対象に、気候変動予測データをもとにした積雪シミュレーションを実施した。
「営業可能」かどうかの判断には年間で100日以上の滑走が可能かどうかという基準が使われている。自然の積雪だけを条件にしているため人工降雪機を使った営業は今回の試算には含まれていない点に注意したい。
なお9月に入ってから信濃毎日新聞デジタルや福井新聞、下野新聞など各地の地方紙がこの研究を相次いで取り上げているが、これは8月に発表された研究が冬のシーズンを控えた時期に改めて注目されたためとみられる。
気温上昇シナリオ別に見る結果の違い(2℃と4℃)
今回の研究では、気温上昇の幅によって2パターンの試算が示されている。
1つは、産業革命前からの気温上昇を2℃に抑えられた場合のシナリオだ。
これは2030年から2091年ごろに相当する条件とされ、この場合は全面営業可能なスキー場が53カ所、一部営業可能なスキー場が108カ所という結果になっている。
もう1つは、対策が十分に進まず気温が4℃まで上昇した場合のシナリオで、こちらは2050年から2111年ごろに相当する条件とされる。この場合、全面営業可能は先述のとおり7カ所まで落ち込み一部営業可能も26カ所にとどまる。
2℃シナリオと4℃シナリオを比べると、全面営業できるスキー場の数はおよそ7分の1にまで減る計算になり、気温上昇をどこまで抑えられるかで結果が大きく変わることが分かる。
なぜ北海道や長野県など一部地域だけ生き残るのか
北海道大学の発表では、北海道や長野県のような緯度が高い地域、標高が高い地域のスキー場は相対的に存続できる可能性が高いと指摘されている。
これは単純に、気温が低く保たれやすい場所ほど気温が上昇しても自然の雪が積もる条件を維持しやすいためだと考えられる。標高が高いほど気温は下がりやすく、緯度が高いほど寒冷な気候が続きやすいという地理的な条件がそのまま結果に表れている形だ。
発表では、こうした傾向から日本のスキー観光が一部の地域に集約されていく可能性があるとも指摘されている。つまり、今後は「どこでもスキーができる」時代から、「限られた高標高・高緯度エリアに人が集中する」時代に変わっていく可能性があるということだ。
【考察】この発表が今後のスキー場経営や自治体にどう影響するか予想
ここからは筆者の考察(予想)です。
今回の発表を受けて、今後はスキー場を運営する企業や自治体が、人工降雪設備への投資や、高標高エリアへの投資を加速させるのではないかと予想する。
そう考える理由は3つある。
1つ目は、すでに全国のスキー場で暖冬・少雪による営業日数の減少が課題になっており、人工降雪機の導入や増設を進める施設が増えてきているという背景があるためだ。今回のように数字で具体的な危機感が示されると、経営判断を後押しする材料になりやすい。
2つ目は、北海道大学の発表自体が、日本のスキー文化や地方観光への打撃につながりうると報じられている点。地域の観光収入に直結する話であるため、自治体側が対策を検討する動機になりやすい。
3つ目は、今回の研究が学術論文として発表され、今後も同様の追加研究やより詳細な地域別データが公表される可能性がある点。研究が積み重なるほど、行政の政策判断にも反映されやすくなる。
これはあくまで筆者の勝手な予想であり、実際にどの企業や自治体がどのような対策を取るかは今後の発表を待つ必要がある。この予想自体が変わる可能性もある点は留意してほしい。
読者が気になるポイントをQ&Aで確認
Q. このシナリオはいつ頃の話なのか?
4℃上昇のシナリオは2050年から2111年ごろに、2℃上昇のシナリオは2030年から2091年ごろに、それぞれ相当する条件とされている。
つまり、来シーズンすぐに全国のスキー場が今回の数字どおりになるという話ではない。
あくまで長期的な気候変動が進んだ場合の試算だ。
Q. 人工降雪機を使えば影響を避けられるのか?
今回の試算は自然の積雪だけで営業できるかどうかを基準にしたもので、人工降雪機を使った営業は対象に含まれていない。そのため、人工降雪設備への投資が進めば、今回示された数字よりも実際に営業を続けられるスキー場は増える可能性がある。裏を返せば、今後は人工降雪への依存度がさらに高まっていくとも考えられる。
現時点で公表されていないこと
今回の報道や発表内容を確認した時点では、次の点は公表されていない、または確認できていない。
- 全面営業可能とされる7カ所の具体的なスキー場名
- 2℃シナリオで残るとされる53カ所の具体的な地域や内訳
- 北海道内・長野県内でどのスキー場が対象に含まれるかの詳細
- 今回の予測が個別のスキー場の営業計画にどう反映されるかについての、各運営会社からの公式コメント
これらの情報については、北海道大学や関係機関から続報が出た場合に、改めて確認したい。
まとめ
北海道大学の研究チームが発表した分析によると、気温が4℃上昇した場合、自然の雪だけで全面営業できるスキー場は全国でわずか7カ所まで減る。
一方、気温上昇を2℃に抑えられれば53カ所が残るとされ、今後の気候変動対策の進み方によって結果は大きく変わる。
北海道や長野県など、緯度や標高が高い地域は相対的に生き残りやすいとされているが、具体的な対象スキー場名や地域別の詳しい内訳はまだ公表されていない。冬のシーズンを前に今後も関連する発表や報道が続く可能性があるため続報を確認していきたい。


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